清掃
常に掃除をし、きれいにすること
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科学的P4S活動における「科学的清掃(Scientific Seisou)」の実践について
整理・整頓が完了した環境において、次に取り組むのが「科学的清掃」です。 科学的P4S活動において、清掃は単に「きれいにすること」ではありません。「清掃は点検(Inspection)なり」という産業界の鉄則に基づき、不具合の早期発見と感染制御を行うための科学的な業務プロセスと定義します。
1. なぜ、「科学的清掃」が必要なのか(必要性)
清掃を「新人がやる雑用」や「外注業者任せにするもの」と捉えてはいけません。医療従事者自らが科学的視点を持って清掃に関与すべき理由は以下の通りです。
① 「点検」による異常の早期発見(リスク管理) 清掃は、対象物に触れ、近づいて見る行為です。このプロセスを通じて、普段は気づかない「微細な異常」を発見します。
• 機器の不具合: 医療機器の油漏れや異音、ネジの緩みなどを発見し、故障や事故を未然に防ぎます。
• 設備の劣化: 車椅子の破損、床のめくれ、配線の被覆破れなどを発見し、患者さんの転倒や怪我を防ぎます。
② 科学的な「感染制御」(医学・物理学) ほこり(塵)の中には、細菌やウイルス、アレルギー物質が含まれています。誤った方法(科学的根拠のない自己流)で掃除をすると、これらを空中に舞い上げ、逆に感染リスクを高めてしまいます。物理学(気流・重力)と化学(殺菌・溶解)に基づいた清掃が不可欠です。
③ 心理的安全性と信頼性の向上 「割れ窓理論」の通り、汚れを放置すると規律が乱れ、モラルが低下します。清潔な環境は職員の意識を高め、患者さんからの信頼(評判)を向上させます。
2. 実践のための「科学的アプローチ」
いきなり雑巾で拭くのではなく、以下の科学的な手順で進めます。
STEP 1:まずは「観察(Observation)」 どこに、どのような汚れがあるか、現状を正しく把握します。
• 汚れの可視化: 「ハンカチ作戦(白い布で拭いて汚れを見える化して掲示する)」などを実施し、全員で汚れのレベルを認識します。
• 種類の特定: その汚れは「水で落ちるか(水溶性)」「油が必要か(脂溶性)」「削る必要があるか(物理的固着)」を見極めます。
STEP 2:化学的視点による「洗剤・用具の選択」 汚れの性質(pHなど)に合わせた中和・溶解を行います。
• 水溶性(血液、醤油など): 水拭きや酵素系洗剤を使用。
• 脂溶性(皮脂、油性ペンなど): アルコールや界面活性剤で溶かして落とす。
• 固着汚れ(尿石など): 酸性洗剤等で化学分解するか、物理的に削り落とす。
STEP 3:物理学的視点による「手順の実行」 重力や空気の流れ(流体力学)を考慮した、再汚染させない手順を守ります。
3. 科学的根拠に基づいた「具体的ルール」
経験則ではなく、理に適った以下のルールを徹底します。
① 「いきなり窓を開けない」の原則(気流制御) 昔ながらの「窓を開けて換気しながらハタキをかける」は間違いです。
• 理由: 窓を開けると気流が発生し、床に静かに堆積していたウイルスを含むほこりを空中に舞い上げ、吸い込んでしまうリスクがあるからです。
• 正解: 「まずドライ(乾拭き)で静かに除去」し、その後に水拭きや換気を行います。
② 「上から下へ」の原則(重力)
• 理由: 重力により、ゴミやほこりは上から下へ落ちます。下を掃除した後に上を掃除すると、下がまた汚れます。
• 正解: 棚の上 → 机の上 → 床 という順序を守ります。
③ 「一方向拭き」の原則(拡散防止)
• 理由: ゴシゴシと往復拭きをすると、取った汚れや細菌を再び塗り広げてしまいます。
• 正解: 「一方向」に拭き取り、拭き取った面は内側に折り込み、常にきれいな面で拭きます。
④ 「奥から手前へ」の原則(動線管理)
• 理由: 自分の足で清掃済みのエリアを汚さないため、またゴミを効率よく回収するためです。
• 正解: 部屋の奥から出口(手前)に向かって後退しながら清掃します。
⑤ 「清浄から汚染へ」の原則(交差汚染防止)
• 理由: 汚染度の高い場所を先に触ると、その菌をきれいな場所に広げてしまいます。
• 正解: 清潔エリア(ナースステーション等)→ 準清潔エリア(廊下等)→ 汚染エリア(トイレ・汚物室)の順序で行います。
4. 科学的清掃のゴール:「予防清掃」
科学的清掃の究極の目的は、「清掃しなくてもよい状態」を作ることです。
• 発生源対策: 「なぜここは汚れるのか?」を分析し、ほこりや液ダレの発生源を断ちます(例:通気口にフィルターを貼る、液ダレしない容器に変える)。
• 予防措置: 汚れることが分かっている作業の前には、あらかじめシートを敷くなどして、汚れを付着させない工夫をします。
毎日の清掃を「単なる作業」にせず、「今日はどんな異常があるか?」という点検の目を持って行うことで、病院の安全性は飛躍的に向上します。