2022年11月26日(土)、27日(日)、神戸で第17回医療の質・安全学会学術集会が開催されました。コロナの影響で、2年ぶりの開催となりました。
私は、企画演題「日本医療の質・安全学会設立の時期を振り返り、人新世時代の患者安全を考える」で演者の1人として講演しました。
当初は、高久先生を追悼するセッションとして企画されました。
2004年8月に、医療安全にかかわるクローズドのシンポジウムが箱根で開催されました。その際に、当時、医学会長の高久史麿先生から、学会の設立が必要ではないかとの発言をいただき、平成17年(2005年)に学会が設立されました。 今年、第17回の学術集会を迎えることとなりましたが、残念ながら高久先生は2022年3月24日17:34 にご逝去されました。
医療システムの実態を知った時、非常に驚いた。現実を直視すると、
たくさんの医療事故が発生している。なぜこれほど問題が多いのであろうか。
筆者は、医療システムは安全に仕事をするために必要な要件が満たされていないから、と考えている。これを理解するために航空や原子力と比較してみる(表1)。原子力発電プラントの運転員は発電システムを、パイロットは航空機を制御している。医療では、医師が患者の体を制御していると考えることができる。表1から分かるように、医療システムは本質的に不完全であり、さらに、慢性的な3N状態(No Money, No Time, No Manpower)にある。従って、医療は安全の条件を満たしていないと考えることができる。
では、どうすればいいのであろうか。
医療の最大の問題点は患者に関する情報の不足である。判断に必要かつ十分な情報がなければ、どんなに優秀な医師でも正しい診断には限界がある。そこで、患者情報をクラウド上に厳密に管理されたサーバーに保存しておき、必要に応じてそれを参照すればいい。こうすれば、どこに行っても患者情報が得られることになる。一方、患者(=国民)が、医療のリスクは高いことを理解する必要がある。さらに、医療安全には患者にも義務が発生するという理解が必要である。
リスクは医療システムだけにあるのではない。国民がリスクを理解するために、小・中学校の義務教育に「リスクマネジメント」の科目が必要である。よって、現在の医療システムのリスクを大きく低減するには、国の大きな関与が必要である。
2年ぶりの開催ということで、「お久しぶり」という挨拶の連続でした。その場で立ち話をすると、あっという間に15分、20分と時間が経ってしまいました。
コロナ対応で集合型の研修ができなくなり、遠隔での研修や会議をこの二年間ほどやってきました。遠隔で情報交換をすることはできますが、やはり、直接、会って話をする方が遥かにいいと実感しました。