KAWANO Ryutaro

養護教諭ステップアップセミナー2022

千葉県教育会館大ホール
コロナ対策のために人数を制限し、遠隔で配信されました。
2022年8月5日金曜日の午後、千葉県養護教諭会主催の「養護教諭ステップアップセミナー2022」が開催されました。
コロナ対策のために、ハイブリッド開催(会場開催及びWeb開催の併用)でした。私は「リスクマネジメントとヒューマンエラー対策」で、約90分間の講義をしました。
ImSAFER分析手法を使って分析した事例として、ASUKAモデルの話をしました。
(補足説明:養護教諭の主な仕事内容は、学校内の救急処置や生徒の健康管理、保健指導、健康相談、環境衛生などです。)

リスクマネジメントとヒューマンエラー対策

【要約】
リスクマネジメントでまず理解しなければならないことは「安全は存在しない」ということである。あるのはリスクのみである。「安全」とはリスクが非常に低い状態であり、我々が勝手に安全と言っているに過ぎない。リスクを高める要因の1つがヒューマンエラーである。エラー対策では、まず、エラーとは何かを理解することである。定義にはいろいろなものが提案されているが、本講義では「人間のある行為があり、その行為がある許容範囲から外れたもの」と定義する。そう考えると、ヒューマンエラーは原因ではなく結果である。さらに、結果であるならば、人間の行動メカニズムを理解しなければ合理的で有効な対策を立てることは困難である。講義では人間の行動メカニズムの理解の手助けとなる行動モデルを解説し、このモデルをベースにしたエラー対策を紹介する。

ASUKAモデル

平成23年9月29日、さいたま市立小学校6年生の桐田明日香さんが、駅伝の課外練習中に倒れ救急搬送された後、翌30日に死亡するという大変悲しい事故が起きました。
「体育活動時等における事故対応テキスト~ASUKAモデル~」は、この事故を教訓とした、教員研修等のためのテキストです。教員研修を充実させ、学校の安全度を高めることを目的としています。教職員はもとより、全国の多くの方々に広く活用されることを期待しています。
「明日香さんの事故から学ばせていただく。」「二度とこのような事故を繰り返さない。」という想いを込めてつけた愛称が「ASUKAモデル」です。子どもたちを毎日元気な姿で家庭にお返しすることを教職員一人ひとりが心に刻み、傷病者発生時対応訓練を繰り返し行うとともに事故発生時への備えを行うことの重要性を示しています。
(http://www.city.saitama.jp/003/002/013/001/p040426.html)

”さいたま市の教職員は一通りの救命講習を受講済みだったのに、なぜ蘇生できなかったのか?”
この疑問に対して、当時の教育委員会長の桐淵 博氏が中心となって「体育活動時等における事故対応マニュアル作成プロジェクトチーム」が立ちあがり、私(河野龍太郎)がImSAFER分析手法の講義をメンバーに行いました。
行動分析(ImSAFER)により 発見された主な問題点の一つが「マニュアルに実効性がない」ということでした。
また、対策として、
①応急手当普及員講習会の受講(教職員)
②体育活動における重大事故対応シミュレーションの実施
③AEDの使用を含む心肺蘇生法の実習の実施(児童生徒)
④AEDの使用を含む心肺蘇生法の講習会の実施(保護者)
⑤マニュアルの作成及び定期的な見直し
⑥重大事故発生時携行器材などのパッケージ化
⑦体育活動開始前後のブリーフィング
などでした。

その後、救急専門の医師の協力を得て、出来上がったのが、「体育活動時等における事故対応テキスト~ASUKAモデル~」です。
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